先輩とリツコさんみたいだなと思った。
先輩の本気の告白が実を結んで、どこかで静かに暮らしているのかもしれなかった。
「私の読んだ小説ではね、心中しちゃってた。毒を盛って、一緒に死んじゃうの。悲しいけれど、それってきっと究極の愛だよね」
それもありえなくはない。
嫉妬深い旦那さんを恐れて、2人は_____
考えるだけでも嫌になる。
先輩が今どこで何をしているのか知っている人は1人もいなかった。
1度だけ、「ミケ先輩が退学したらしい」という噂を耳にした。
その噂の真偽は、当の本人が大学に来ないので確かめられなかったけれど、季節が変わっていくにつれ、先輩の噂も風化していった。
「ミケ猫だぁ~」
そう言ってはしゃぐ声に反応してしまった。
振り返ると、ぽっちゃり太ったミケ猫の周りに学生が群がっていた。
カフェテリアの前の池の前、校内に迷い込んだ猫だ。
その猫はアゴの下に小さい金色の鈴がついた首輪をしていた。
飼い猫で人に慣れているのか甘えるような声で鳴いている。
猫先輩みたいな猫だなと思った。

