センチメンタル*宅配便



「時間見なよ。午後の授業始まる。学生なんだから、真面目に授業に出なさい」

 
左手首の腕時計を指しながら先輩は答えた。


自分だって、いつも授業サボって居眠りばっかりしてるくせに、こんな時だけ先輩ぶらないでよ!

 
ガサガサと垣根を掻き分ける音と鈴の音が遠ざかっていく音が耳に残った。

 
私は小さな丘の上に立ち尽くしていた。


金木犀の強い香りを感じる。涙はいつの間にか乾いていた。


 
オス猫はいつか旅に出て行くものらしい。


 
猫先輩はその日を境に秘密基地に現れなくなった。




「駆け落ちした恋人同士の行く末ってどうなるのかな?」

 
カフェテリアでぼんやりとパスタを食べながら訊ねると、みんなが目を丸くして、私の顔を覗き込んだ。

 
「どうしたの?いきなり・・・」


「ちよこ、恋に悩んでるの?相談乗るよ?」

 
「いや、そうじゃなくて、ただ訊いてみただけ」と笑顔を作る。


唐突過ぎた?なんだぁ~と友達は少し残念そう答えた。


「この間見た映画は女の人が海外に行ったの。平凡な主婦が大学生と恋に落ちちゃうの。結果的に男が追いかけてって、2人にとってはハッピーエンドだったよね」