センチメンタル*宅配便



優しいキスだった。


甘くない、コーヒーの味。

 
「こんな同情のキスはいらない・・・」

 
唇が離れるとまた涙が溢れてきた。

 
「リツコと出会わなければ、きっと、ちよこを好きになっていただろうな」

 
「・・・嘘つき」

 
嘘じゃないさと先輩は私の頭を撫でると鈴の音と共に立ち上がった。

 
「俺もさ、ちよこのおかげでやっと決心が着いたんだ。さっきのキスはそのお礼だよ」

 
先輩は大きくの伸びをすると、深呼吸をした。

 
「ここの雰囲気、この時期にしか味わえない金木犀の匂い。ちよことここで過ごした半年は俺にとって宝物だよ」

 
「先輩・・・」


何で今、そんなことを言うんですか?


それじゃあ、まるでもう、先輩とお別れするみたいじゃないですか?


立ち上がり、先輩と向かい合った。

 
「俺は今から愛しい人をさらいに行って来る」

 
足元のゴミを拾い、丘を駆け下りる。


「待って!」思わず叫んだけれど、先輩はイタズラっぽい笑みを見せて、