「ちよこの気持ちは知ってたんだ。知ってて、俺は甘えてた。言葉に出来ない思いとか、遣り切れない気持ちをちよこに甘えることで中和してたんだ。俺はちよこを利用してたんだ」
リツコさんが先輩を利用するように、先輩も私で心の均衡を保っていた。
「いつから、私が先輩を好きだと?」
「割と始めの方から・・・だろ?俺がここに来ると飼い主を待つ犬みたいに喜んだ顔してくれて、正直、かわいいなって思ったよ」
「先輩は最低です」
「解ってる。最低だ」
「先輩、私じゃダメですか?」
じっと先輩を見つめ、そう訊ねた。
ずっと、訊いてみたかった言葉だ。
私だったら、先輩の嫌がることはしないし、いつでも先輩を一番に考えます。
ウザイって思われるかもしれないけれど、執着しすぎって思われるかもしれないけれど、私はそれ位、先輩のことが好きなんです。
「ごめん」
やっぱり彼女が好きなんだ。
先輩は私の視線に答えると、ふっと微かに笑った。
唇の間から八重歯が覗く、その笑顔が好きだ。
先輩の両手が私の顔を包み込み、瞼を閉じると、先輩は私にキスをした。
唇が触れる時、ちりんと先輩の腕輪が鳴った。

