・・・リツコ・・・それがあの女(ひと)の名前なんですか?
リツコじゃない。
今、先輩の目の前にいて、先輩にキスしたのは私です。
ぽたり
涙が頬を伝って先輩のおでこに落ちた。
目元を拭い、カバンの中からハンカチを探す。
「・・・ちよこ」
膝の上で声がした。
先輩が目を開き、私を見上げていた。
嫉妬と恥ずかしさで今の私はきっと情けない顔をしている。
そんな顔を先輩に見られたくなくて、両手で覆った。
先輩は起き上がると私と向き合った。
そっと私の両手を解いて、首を捻って私の顔を覗き込む。
「・・・起きてたんですか?」
「意外と眠りは浅い方なんだ」
先輩の指が目元に触れ、涙を拭った。
「ごめん」
先輩は謝った。

