(ちりん・・・)

 
鈴の音が聞えてきた。

 
来た。


私は瞼を閉じてゆっくりと数える。


1・2・3・・・数える度にちりんちりんと揺れる鈴の音が近づいてくる。


ガサガサと垣根を掻き分ける音がその後に続く。


4・5・・・そして目を開く。

 
「よぅ」

 
隣を振り返ると片手を上げて微笑む猫先輩がいた。


 

猫先輩というのは私が付けた私の中だけのあだ名であり、彼はみんなから「ミケ」の愛称で呼ばれている。


先輩の名前が「三宅」だからだ。


略して、「ミケ」。

 
先輩は私より1つ年上の3年生、学部も違うので、構内ですれ違うことはまずない。

 
出会いは偶然だった。




「ん?何だ君は?ここは俺の秘密の場所なんだけど・・・」


桜舞う4月のことだった。


池の周りを散歩していた時にこの垣根の向こう側が小さな丘のある開けたスペースになっているのを発見した。