「契約?」
首を傾げると、先輩は右手の腕輪を指差した。
赤い皮のベルトに金色の鈴がちりんと鳴る。
「俺は彼女のペットなんだ。これはペットの首輪みたいなもんだ。これで俺は彼女の所有物になった。会いたい時に会って、寝たい時に寝る。俺は彼女の意思に従う」
先輩のブレスネットってそういう意味があったんですね・・・いつも大切そうに肌身離さず付けているブレスネット、先輩があの人の所有物だという証拠。
「先輩はあの人を愛してるんですよね?そんな恋、辛くないんですか?結局、あの人を愛しても最後は旦那さんの元に帰っていくんでしょう?」
「それを考えるとキリがないからさ。俺は彼女を愛してるから、こういった形の恋人でも彼女が笑顔でいてくれるなら、それでいいんだ」
「そんなの・・・切な過ぎます」
「そうだね、切ないね」
先輩はさらりと答える。
まるで自分じゃない誰かの話をしているみたいに。
今日は仕事先の人とゴルフに行くと朝から出掛けていた旦那が、実は彼女を尾行してた。
驚いたのと同時に自分の浮気現場に乗り込み、相手の男を殴って逆上した夫の行動に彼女は満足したに違いない。
自分は夫に愛されているのだと。
また自分に自信がなくなると先輩に会いに来るの?

