センチメンタル*宅配便



普段通りにレジを打ち、会計を済ませた所で、袋に商品を詰める。


ふと、彼女を見た時に、サングラスの間から泣き腫らして赤くなった瞼が覗いていた。

 
泣いてたんだ・・・そう思った先輩はビニール袋を手渡す時に、彼女の手を握り、「大丈夫ですか?」と訊いてしまった。


彼女は眉間に皺を寄せ、先輩の手を払うようにビニール袋を受け取ると何も言わずに店を出て行ったという。

 
その後、深夜シフトのバイトと入れ替わり、家に帰ろうと店を出た所で、先輩は目を丸くした。


コンビニを出た所、街灯の下にさっきのサングラスをした彼女が立っていたのだ。


片手にビニール袋をぶら下げて、トレンチコートの下から見える細い足先はヒールを履いていて、何だかとても寒そうに見えた。

 
なぜ彼女がそこにいるのか解らなかったけれど、さっきの彼女の拒絶するような態度に少し傷ついた先輩は、彼女を前を何も言わずに通り過ぎた。

 
「・・・夫が浮気してたの。喧嘩して家、飛び出して来ちゃった・・・行く所がないの・・・」


彼女が突然、呟いた。


僕に言ってるんだろうか?彼女を振り向くと、彼女はゆっくりとサングラスと取った。


キレイな女(ひと)だと思った。


彼女の口元から白い吐息が漏れる。

 
「・・・あなたが来るのを待ってたの。ねえ、あなたの家に泊めてくれない?」


先輩の話は危険で美しい物語のようだった。