センチメンタル*宅配便



「悪い男だろ?俺って」

 
そう言う猫先輩の顔が少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?

 
「・・・よかったら先輩の話をしてくれませんか?先輩と知り合ってからもう半年以上経つのに、私、先輩のことって知らないんです。先輩が嫌じゃなかったら先輩のこと教えて下さい」

 
お願いしますとお辞儀をすると、先輩は少し驚いたような表情をして、その後で笑った。

 
さわさわと心地よい風が店のシンボルツリーである大きな金木犀を揺らし、甘くて爽やかな芳香がテラス席に漂う。


先輩はコーヒーを一口飲み、自分の恋の話を語り始めた。

 


猫先輩は大学入学を機に上京してきたのだという。


それなりに友達も出来て、それなりに大学生活も満喫していた。


学校から程よく離れた駅にアパートを借り、家の近くのコンビニでバイトをしていた。

 
「彼女に会ったのはいつだったろう?去年の冬?すごく寒い日だった」


先輩は空を見つめながら、その日を思い出すように目を細めた。

 
その日は夕方から夜にかけてのシフトだった。


丁度、10時を過ぎた頃、その日のバイトの上がり時間が迫ってきた時に顔の割りに、大きなサングラスをし、トレンチコートを羽織った女の人が店にやって来た。


「不思議に思ったんだ。夜にサングラスって、芸能人じゃあるまいし・・・」


その女の人は店内を物色し、カゴに商品を放り込むと会計にと、先輩のいるレジへやって来た。