センチメンタル*宅配便



暫らく行くと、急に先輩が立ち止まった。


先輩の背中に突っ込みそうになり、慌てて立ち止まる。


金木犀の香りがした。


先輩と私だけの秘密基地と同じ匂い。


先輩の視線の先には大きな金木犀の木が立っていた。


爽やかな甘い匂いを漂わせて、足元に散った小さなオレンジ色の花が塵のように積もっている。


金木犀の木が立つ横からコンクリートの階段が伸びていて、その奥の少し高い位置が民家のようなカフェになっていた。

 
「へぇ、こんなカフェいつ出来たんだろう?」

 
先輩の後に続いて階段を上った。


階段を上りきるとテラス席が広がっていた。


こげ茶色のウッディなテラス席には凝ったデザインのアイアンのテーブル席が並び、テラス席を囲うように秋の花々が植えられた花壇が連なる。


店内へと進む、アプローチの奥は金木犀の垣根になっていて、コーヒーの香りに交じって花の芳香も感じられた。

 
「天気もいいし、テラス席にする?」


先輩の提案に頷き、空いているテーブル席に座った。


丸いテーブルに先輩と向かい合わせで座る。


先輩の顔を見ながら話すのは初めてで緊張してきた。


ウェイトレスに注文をして、私たちが頼んだ飲み物が届くまでの間、私は回りをぐるりと見渡した。