かりんの傍を離れて……


「佐伯」


廊下で他クラスの男子生徒と話している佐伯を見つけたから声をかけて。


「どうした?」

「……どうも、しない」


強がって。


「…っ…どうもしない…」


俯いて、堪えられずに涙を流した。


「わっ、え、どうしたんだよ。佐伯、何コレ」


戸惑う男子生徒は、確か男バスの部員、桃原 陽輝(モモハラ ハルキ)。


「……ハル、また後ででいいか?」

「いいけどさ、平気か?」


桃原が戸惑うように私の顔を覗き込んで来る。

平気なわけないけど、何も知らない桃原に言ってもしょうがないし、何よりそんなに面識がないのにこうして声をかけてくれたのはどこか嬉しい事で。

私が涙をぬぐいながらコクンと頷くと、桃原はちょっとだけ安堵したように微笑んで「そっか」と言って姿勢を戻した。

変わるように佐伯が私の背中に手を添えて歩くように促す。