「右京って優しいもんね」


そう言って笑うのが精一杯で、かりんが少し恥ずかしそうに微笑んだ姿が私を絶望へ叩き落とすような感覚に陥る。


ここで『私も好きなんだ』と言えればきっとかりんは引いてくれる。

『実は右京と関係持ってる』って言えば、もしかしたらかりんの右京への好意をないものに出来るかもしれない。


でも、出来ない。

右京がどれだけかりんを好きなのか知ってるから。


私にかりんを重ねて触れるほど、好きなのを。


「あっ、かりんごめん。私用事あるから先に戻るね」

「そうなの? わかった。また帰りにね」

「うん。じゃあね」


だから、私に出来るのは逃げる事だけ。