「……聞いた」

「あっそ。で、なに? 文句でも言いたいの? だったら好きに言い──」

「文句じゃない」


野宮さんの言葉を切って否定すると、彼女は眉根を寄せて私を見た。


「……じゃあ、なに」

「赤ちゃんについては、嘘で良かったって思ってる」

「でしょうね。悩みが減って良かったじゃん」


うざったそうに視線を私から外した野宮さんは、その瞳にまたフェンス越しの景色を映す。


「そういう意味じゃなくて、本当にお腹にいたなら、赤ちゃんが無事じゃなかったかもしれないでしょ?」

「……は?」


訝しげな表情。

まるで信じられないような物でも見るような目で、野宮さんが私を見ている。

そして……


「……バカなの?」


そんな事を問われた。