「お待たせ。アイスティーでいいかな?」


自室に入ると、蓮はいつもうちに来ると座っていた位置に腰を下ろしていた。

その懐かしさに心臓がキュッとなる。


「ああ。サンキュ」


テーブルに、アイスティーやお菓子をお盆から移すと、蓮はさっそくアイスティーで喉を潤した。

私は彼の向かい側に腰を下ろして、何を話すべきか迷っていた。

野宮さんの話を聞いてしまった以上、この前みたいに素直な気持ちを言葉には出来ない。

彼に愛情を捧げる事はもう、できないのだ。

とにかく、蓮がどうしてここに来たのかだけ聞こうと思った私は、アイスティーに落としていた視線を上げる。

──と、いつから見られていたのか。

蓮の瞳が真っ直ぐに私を捉えていて。

思わず、逸らしてしまう。


「……なんで逃げる」

「あ……そんなつもりは──」

「なかったとしても、何か隠してるんだろ」


どうして、わかるのか。

こんな短時間で悟れるほど、私はわかりやすいの?

それとも蓮の観察力が優れているの?


「ハルから連絡があった。なずなが何かまた何か背負ってるんじゃないかって心配してたぞ」

「……そう、だったんだ」


ハルが心配して相談したから、蓮が来てくれたんだね。

ありがとう、ハル。

だけど……


言えないの。


私から言う権利は、ないんだ。