野宮さんが怒りで拳を強く握り、鋭い瞳で夏目さんを見つめて。

引き結んだ唇が形を変え、言葉を紡ぐ。


「信頼してたのに、ふざけんな」

「……なっちゃん……」


掠れた夏目さんの声。

彼女の体は、少し震えていた。

それでも、振り絞るように野宮さんへと言葉をぶつける。


「このままじゃダメだと思ったの。こんな方法じゃ佐伯君の心だって──」

「うるさい」


と、今度は野宮さんの瞳が私を捉え、片口を上げて憎々しげに笑う。


「もしかして、勝った気でいる?」

「私は勝ち負けなんて──」

「むかつく、そのいい子ぶったコメント。どうしてアンタなの。蓮は、どうしてアンタにあんなに入れ込んだわけ?」


話しながら、更に怒りを積もらせていく野宮さん。


「それ、返してよ」


差し出された手。

野宮さんの瞳は憎悪を孕ませ私を睨んでいる。