私は、彼女を真っ直ぐに見て口を開く。


「あの、その時の写真が入ったデータって……誰が、持ってるの?」


答えてもらえるだろうか?

不安に駆られながらも夏目さんに質問すると、彼女は「それなんだけど……」と言うと、制服のポケットから透明の小さなケースを取り出した。


「これ、受け取って」

「──え?」


手渡されたケースの中には薄く黒い何かが入っていて。

私が首を傾げると、夏目さんは微笑む。


「写真データが入ってるSDカードだよ。なっちゃんに佐伯君に見つかったら大変だよって説得して、私に任せてもらったの」


写真のデータと言われれば、あの日のものしか思いつかず。

けれど、それをなぜ夏目さんが私に渡してくれたのか。


「どうして……?」


驚きで目を見開くようにしたまま問いかければ、夏目さんは真剣な眼差しを私に向けて話す。


「片桐さんの話を聞いて決めたの。私もぶつかってみようって。なっちゃんに、ちゃんと幸せになって欲しいから……」


いつもどこかビクビクしているような彼女とは違う凛とした表情に、私は魅入るように夏目さんの声に耳を傾けていた。


「だから、片桐さんはもう何も気にせず片桐さんらしく過ごして。なっちゃんの説得は私が頑張ってみるから」