──こんなんじゃダメ。

そう頭では思っているのに、嬉しくて自然と口の端が上がってしまう。


平日の午後、本日最後となる現国の授業を受けながら、私は、緩んだ顔を両手で挟むようにそっとおさえた。


愛しいと想う人に、素直に愛情を示せることがこんなにも幸せな気持ちにさせるなんて……

この久々の感覚は、蓮と付き合うようになった頃の気持ちを思い出させる。

というより、前よりももっと好きになっているかもしれない。

……と思うのは、吊り橋効果に似た錯覚なんだろうか。


私と蓮は、気持ちを確かめ合ってから数日経った今も学校内ではあまり接触する事はない。

ハルと付き合ってる設定は継続中だし、その甲斐あってか野宮さんが私たちに関して何か疑っているような素振りはない……と、蓮から昨日電話で聞いたばかりだ。

ちなみに、私と蓮が連絡を取る時は野宮さんの無断携帯チェックを警戒してメールを使わない。

メールだと受信BOXから消しても履歴が別の場所に残ってしまうかららしいけど、その辺りをちゃんと考えてるなんてさすが蓮というべきか。


とにかく、そんな状況で蓮と心を通わせているからか、以前にも増して恋しくて仕方ないのだ。

蓮も言ってたように、こうなると早く前のように蓮と恋愛がしたい。

だけど状況は相変わらず止まったまま。