「もしいても、偶然会ったって言えばいい。一度くらいならありえる話しだし、誤魔化せる」


確かに、学校以外で鉢合わせた事はない。

たった一度くらいなら、蓮だったらきっとうまくやるんだろう。

私が頷いて了承すると、蓮は目を細めて微笑んだ。


そして、私たちは夜のネオン輝く繁華街へと移動した。

居酒屋やキャバクラが多いこの繁華街は時間のせいか人が多く行き交っている。

蓮は人の波をうまく縫って歩き、私を誘導してくれた。

そして、有名チェーン店のカラオケ店の自動ドアをくぐると私を手招きする。


「カラオケ?」

「ゆっくり人の目を気にせず話すなら最適な場所だろう?」


あ、確かに。

個室なら相当の確率じゃなきゃ知り合いに会う事はないもんね。

もし会ったとしても、それが野宮さんに関連してる確率は更に低い。

私は「そうだね」と答えると、蓮を追って店内へと足を踏み入れた。


受付で手続きを済ませて案内された部屋へと向かう。


蓮とカラオケに行くなんて……右京の事でお世話になって以来かもしれない。