「じゃ、気をつけて帰れよ」

「うん。ありがとう」


ハルの家の最寄り駅前で私が手を振ると、送ってくれたハルは微笑みを残して去っていった。

本当は一人でも大丈夫だと言ったのだけど、変な奴にナンパされたらイラツクからと言って送ってくれたのだ。

ハルはまだ……私を想ってくれている。

その事に、ごめんなさいとありがとうの気持ちが同時に湧き上がるという複雑な心境になりながら、カバンの中にしまってある定期を探す。

と、急に私の上に影が差して、怪訝に思い顔を上げれば──


「なずな」

「……え……」


用心の為にと先に帰っていたはずの、蓮が立っていた。


「少し、話しできるか?」

「で、でも、もしかしたら野宮さんに見られるかもでしょ?」

「確かに用心して先に出たが、まあこの辺りでアイツが遊ぶことはないから大丈夫だろ」


言われて、それでも迷う私に蓮は安心させるように笑いかける。