「なずな、いつから見てた?」


咎めるわけでもなく、普段の調子で話しかけられる。

当然、ハルは少し驚いた様子で蓮の視線を追って私の姿をその視界に収めた。


「……少し前から」

「だと、ハル君」

「…………」


そしてまた沈黙。


蓮はハルの様子を何とも思わないのか、乱れた包帯を整え始める。

私がそれを手伝おうか迷っていると、ハルの声がした。


「佐伯」

「なんだ?」


蓮が応えたかと思うと、ハルは思い切り肘を下げて拳を突き出し……


蓮の左頬にヒットさせた。