「その怪我で俺に勝てんだったら、認めてやるよ」

「いじめっ子だな、ハル君は」

「俺からコイツを奪うってんなら、そんくらいしてもらわねーと納得いかねんだっつの」


ハルのセリフと私を指す視線で私にもついに、流れが理解できてしまった。


「えっ……」


驚いてハルを見やると、彼はさっきから浮かべていた不機嫌そうな表情に弱さを浮かべて言った。


「佐伯が勝ったら、お前の好きなようにしていいよ」

「……え……?」

「んじゃ、練習戻るわ」

「ちょっとハルまっ──」

「無駄だ。ハルはもう決めてる」


蓮の声に止められて、私はそのまま押し黙ってしまう。


ハルの決意に、蓮はどう答えるつもりなのか。


それを聞けないまま私は、病院へと向かう蓮の背中を見送った。