「左腕だけなのかい?」

「あと、頭を打ってるから精密検査して、結果はまだみたい」

「そうか……ご家族は?」

「着替えとかを家に取りに戻ってる」


私は蓮のお母さんから目覚めた時に誰もいなかったら淋しいだろうからいてくれと頼まれていた。

私が原因だと話したのに、かけつけた蓮のお母さんは私を責めず、逆に励ましてくれて。


──と、今まで黙っていたハルが声を発した。


「……なずな、ちょっといい?」


その声色は固い。


「うん……」


返事をすると、ハルは病室を出て行く。

私は急いで立ち上がると、あとを右京に任せてハルを追った。


ハルに連れて行かれた場所は外。

正面玄関とは反対にある、駐車場の隅だった。

すでに陽は暮れて、空には星が輝き始めている。

薄暗い景色の中、ハルは不機嫌そうな顔で唇を動かした。