「なずな」


柔らかい声に振り向くと、そこには右京の姿。

右京の後ろには、ハルも立っていた。


事故の直後、騒然となった合宿所に救急車が到着して。

本来なら部長の右京が付き添うはずだったけど、責任を感じていた私の心情を察したのか、右京は私が付き添うようにと言った。

自分はあとから駆けつけるから、と。

ハルは多分、この事故に私が絡んでいるから一緒に来たのだろう。


右京が私の隣に立つ。


「佐伯の容態は?」

「命に関わるようなひどい怪我じゃないけど、左腕を骨折しちゃって……」

「左か……利き手じゃないのは幸いだけど、次の試合は厳しいだろうな……」


やっぱり……そうだよね。

私の心がズキリと痛む。

怪我をさせただけでなく、試合まで出れなくさせてしまうなんて……