「私で良ければ頑張るよ」


答えると、かりんは花のような笑顔を浮かべた。


「ありがとう! ハル君も喜ぶねっ」


無邪気に喜ぶかりんから出たハルの名前。

アハハと笑う私の胸中には、ハルがもしかしたら喜んではくれないかもしれないという不安が広がっていた。

そして──

合宿の日はあっという間にやってきた。


「なずな、ごめーん。向こうにあるケースこっちに運んでもらっていい?」

「はーい」


かりんの指示を受けてお手伝いの役目を頑張る私。

合宿一日目は天候にも恵まれて、青い空の下でゆらゆらと風に揺れている洗濯したてのタオル達が気持ちよさげに見えた。

横切るとふんわりと洗剤のいい香りが鼻をくすぐる。

清潔な香りにちょっと幸せな気分になりながらかりんに言われたケースに手をかけた時だった。


「お疲れさん」


ふいにかけられた声は確認なんかしなくてもわかる、彼の声。