「あ……うん。佐伯は部活終わったの?」


普通に、いつも通りにと意識しながら蓮と会話をする。


「ああ」

「そうなんだ。じゃあ、ハルを迎えに──」

「ハルなら自主練してから帰るらしいぜ」

「えっ、そうなんだ。どうしようかな……」


とりあえずコートまで行ってハルに待っていると告げようか。

それともメールしておく?

あ、でも待ってるって知ったら練習の邪魔になる可能性があるかも。

今日は諦めて帰って、電話でもいいかな……


迷っていると、いつの間にか上履きに履き替えた蓮が「なずな」と私の名前を呼んだ。


「なに?」

「ハルを待つんなら暇だろ。ちょっと手伝ってくれ」

「手伝うって?」

「いいからこっち」

「ちょっと待ってよ!」


私は出していた靴をまたしまって、歩き出した蓮を慌てて追う。

そうして辿り着いた場所は、蓮のクラスだった。