放課後、ハルと一緒に帰る約束もしてなかったけど、家に帰る気にもなれなくて、私は図書室に入り浸っていた。

なんとなく気になった星座の本はまだ3ページほどしか読み進めていない。

どうしても、昨日の蓮の言葉が私の頭の中に甦り、何度も再生されるからだ。


『俺が好きなのは今もなずな……お前だけだ』


あの時、確かにそう言われて、それから……蓮の温かい手が、私の頬に触れた。


トクントクン。

脈が早くなると湧きあがったのは蓮への愛情。

必死に心の奥に押し込めてあった蓮を想う恋の結晶は、いとも簡単に輝きを取り戻してしまった。

蓮の体温をもっと感じたくて、その胸に飛び込みたくて。


だけど、野宮さんとの約束と、ハルの存在がその行為を思いとどまらせた。


「わ…たしは……もう、ハルと付き合ってるし……」

「……わかってる。でもな……このままでいるつもりはない」


そっと蓮の手が私の頬から離れて、代わりに私の肩をポンポンと叩いた。

蓮の表情は普段の彼のものだったけど、どこかスッキリとした感じがして。


「このままでって……?」

「まあ、色々な」


──結局、その色々が何なのかはわからないまま、蓮は私に背を向け屋上を去ってしまった。