桃原と初めてキスをしてから数週間。

衣替えも終わり、初夏の風を感じるようになった頃。


「なーずなー、こっちこっち」

「ごめんハル!」


桃原と私の距離は急速に縮まり、お互いを名前で呼ぶようになっていた。


「お待たせ」

「お待たされ。行こうぜ」


休日のデート。

自然と手を差し出されて、私はそっと彼の手を握る。

桃原……ハルに触れることに抵抗感はない。

それは、私の心が少しでも、ハルへと向っている証拠だと思う。

けれど、恋や愛と呼ぶにはまだ足りない気がしていた。

蓮を愛していた時のような溢れ零れるほどの気持ちはまだ生まれていない。

ううん、生まれているのかもしれないけど、そこに至ってはいない。