校内に放課後の訪れを告げるチャイムが鳴り響く。

それを合図に教室は騒がしくなり、その喧騒をぬって桃原が私の前に現れた。

まだ、席についたままの私の前に立って、猫のようなクリッとした瞳に私の姿を映している。


「片桐、今日って暇?」

「特になにもないけど……」

「だったらバスケ部見学しねぇ?」

「えっ……」

「もう佐伯だって知ってるし、そろそろ良くね?」


桃原が示すのは、私が蓮を避けている事なんだと思う。

この前のデートの時に蓮は私と桃原の関係を知った。

だからもう……一歩前に進めと、そう言ってるんだろう。


進まないと、いけないよね。

桃原と一緒にいると決めたのは私なんだから。