熱は一晩で下がった。

他に目立った症状もないから、多分疲れが原因なんじゃないかと思いながら、学校へ行く支度をする。

鞄を持ってリビングに入ると、朝ごはんを用意してくれているお母さんが私を振り返った。


「おはよう。学校行くの?」

「うん、熱下がってるし」

「そう」


卵焼きが乗ったお皿をテーブルに置いたお母さん。


「そういえば、最近、蓮君来ないのね」


まさかここで今、蓮の名前が出るだなんて予想もしてなくて。

私の心がズキンと大きく痛んだ。


「……別れたから」

「やっぱりそうだったの。残念、お母さん蓮君のこと気に入ってたのに」


少しだけ笑うと、お母さんはキッチンへと戻る。


蓮の存在はこの家にもまだあるんだね。

早くこの想いを忘れないと痛くてたまらない……


ほとんど残してしまった朝ご飯。

私はお母さんにごめんねと告げてから学校へと向かった。