人気のない裏門の前。

空が淡く夕焼けのオレンジを放ち始めた頃、私は唇を噛んでから携帯を手にした。

耳にあてがうと聞こえてくる無機質なコール音がやけに怖くて。


『もしもし』


いつもと変わらない調子の蓮の声が切なく感じる。

私は泣かないようにと大きく息を吸ってから……


「……蓮」


大好きな人の名前を呼んだ。


多分もう



呼ぶことのない名を。