「そう、だね」


帰り支度を済ませたの制服姿の右京に、答えて微笑む私。

不思議な気持ちだった。

泣きたくなるような事はない。

だけど、蓮を好きになる前についた傷が疼くような感覚。

痛いわけじゃない。

ただ少しだけ、胸を締め付けられるような感じがあった。


「部活お疲れ様。かりんは?」

「かりんは用事があるらしいから今日はもう先に帰ったよ」

「そうなんだ」

「……佐伯から聞いたよ。付き合ってるんだって?」


右京の静かな声が私に問い掛ける。


「……うん」

「どうして教えてくれなかったんだ……なんて、俺には言える資格はないよな」

「そんな──」


そんなことないよ。

そう言おうとした。

だけど言えなかった。