蓮はモテる。

友達として見ていた頃は別に気にしなかったけど、彼女となった今は話が別だ。

蓮を好きだという子は絶対にいる。

クラスが別になると、その分見えないものが出てくるからやっかいなのよね。

だから同じクラスであって欲しい。

まあ、ただ一緒にいれる時間が欲しいっていうのもあるわけだけど。


そんな私の心情を知ってか知らずか、蓮は繋いでいた手に少しだけ力を込めた。


「そんなに心配か?」


ふわりと優しい風が吹いて、桜が波打つ。

蓮の髪もふわりと揺れてなびけば、その光景の美しさと儚さに胸が締め付けられた。


蓮とこうして過ごす時間が幻のように見えたから。


そんなわけないのに。

変な事を考えてしまうのはきっと、明日のクラス替えが不安だからかもしれない。


「俺を信じろ」

「……うん、蓮も信じていいからね」


微笑めば、蓮も微笑んで。

桜降る道を、私たちはしっかりと手を繋いで後にした。