姿の見えない猫に謝りながら駈け足でアパートを目指す。

辿り着いた時には、雨は更に激しくなっていた。


「ただいま」

誰もいないアパートに響く私の声。


すぐお風呂に入ろう。
でなきゃ風邪ひいちゃう!


お風呂の準備をしながらも、さっきの猫を思い出す。
姿、見てないけど。


『ニャア』って鳴いてたなぁ。

いつからいるんだろう?


誰かに拾われればいいけれど、誰も拾ってくれなかったら?


ずっと雨の中、鳴いてるの?


そもそも雨宿り出来る場所?


ああ――っ!!

考えれば考える程、さっきの猫が頭を占領する。



うちはペット禁止のアパートなんだよ!?
飼いたくたって飼えないんだよ!?


だけど、だけど・・・。


『どうか親切な誰かに拾われていますように』

願いを込めて傘を手に、元来た道を戻った。