でもそんなことは現実にはあり得ない。
この痛みが現実なんだ。私はそれを受け止めなければいけない。
「うっ…っうっーっ…」
受け止めなきゃ。頭では分かっていても心がそれを拒絶する。
彼の声が脳裏に焼き付いて、忘れたいのに忘れさせてくれない。
泣いてる場合じゃないのに。もう少しで出勤時間だ。
今日は休んじゃおかな。有給は今まで一度も使ってないし、今日くらいいいよね。
こんなに泣いてたら、きっと顔も悲惨だ。昨日からずっと泣きっぱなしだもん。
お化粧しても上手く誤魔化せない。
『今日は休もう』心でそう決めた瞬間、涙は勢いを増した。
頭からシャワーを浴びるとザーザーという大きな音に包まれた。
そんな大雨に似た音に紛れて、私は再び声をあげて泣いた。
この水と一緒に私の心の汚れも流れてほしい。涙を流しながら、何度もそう願った。

