「あ、足痛くて靴脱げない?」


「えっ…?」


佇む私に歩み寄って、麗斗は私が履いていた靴を脱がす。


そして私の体を支えながら手を引いて部屋の中へ進んでいく。


戸惑う私とは反対に彼は至って普通だ。


「そこに座ってて」


麗斗に言われた通り黒いレザー調のソファに遠慮しながらゆっくり体重を預ける。


落ち着きなくキョロキョロと辺りを見渡す。


意外とすっきりと整頓された空間を見て、彼は意外と几帳面な性格なのかなって思った。


「はい、これ」


そう差し出されたのは青色のマグカップに入った温かいお茶。


「ありがとう…」


私がそれを受け取ると同時に彼は私の隣に腰を下ろす。


一口飲むと温かいものが喉を通って、体に温かさが染み渡っていくのが分かった。


少し気持ちが落ち着いた気がした。


「……」


「……」


また沈黙。


静かな空間でふと思い出す。


そういえば私、お店飛び出して来ちゃったんだ…。


少し前のことを思い出すと何だか気まずくなって、俯いた。