駅に近い居酒屋で合コンだったおかげで駅までの道はそう遠くはなかった。


一人で歩く夜道も怖くない。あの人と顔を合わせる方がよっぽど辛い。


駅に着くと、今までにないくらい息が上がっていて苦しかった。


はぁっ…はぁ、はぁ。駅のホームまで続く階段をすべて駆け上がると私は乱れた呼吸を必死に整えた。


待つこと数分で電車が来た。電車が来るまでのほんのわずかな時間でさえも、あの人が追ってきてたらどうしようと思って胸がざわついた。


電車に乗ってからも胸がズキズキと悲鳴をあげた。


家の最寄り駅で電車を降りてから家までの帰り道、私はどうやって帰ってきたのか記憶にない。


ヒールで走った足の痛みもおそらくよれているお化粧も、ぼーっとする頭のせいでよくわからない。


気が付くと私は玄関にぺたんと座り込んでいた。


家に着いたんだ…。頭が痛い。何も考えたくない。



家に帰ってこれた安心したのか気が抜けて、ぽろっと大粒の涙が頬を伝った。


そして、それを合図に一気にせき止められていた涙があふれ出した。


「うっ……っ…うっー」



その日、私は子供のように声をあげてわんわん泣いた。

 


できることなら、会いたくなかった…。








会いたくなかったよ……麗斗……。