やっと涙が止まった頃には、授業も終礼も全て終わった、放課後のことだった。
早くここを出ないと、掃除の人たちが来る。
個室の扉を開けて、洗面台の鏡で自分の顔を見ると、少し目が赤くなっていた。
今日は早く帰ろう。鞄を取りに行こう。
鉛のように重い体を動かして、階段を上り教室に向かった。
やっと教室にたどり着いた時、前から来た麗斗とばったり会ってしまった。
「美桜!ごめん俺、昼行けなくて」
麗斗は平然と笑って、私のもとへ駆け寄ってきた。
「…」
私はそんな麗斗に何も言えなかった。
この表情も嘘なのかなって思ったら、彼にどう接していいのか分からなかった。
「美桜?」
何も言わない私を変に思ってか、麗斗は私の顔を覗きこんだ。
何か言わなきゃ。何か言わないと。
そう思うのに、なかなか言葉が出てこなかった。
「あ、もしかして今日のこと怒ってる?」
違うよ。そんな単純なことじゃない。
「ごめんって!つい仲間と話し込んじゃってさ」
うん、話してたよね。友達と楽しそうに。
私がその話を聞いてたって言ったら、麗斗はどう思うかな?

