歩いている途中、ふと空を見上げると、雲がゆっくりと流れていた。


私の時間もあの雲の様に流れてほしい。ゆっくりでもいいから止まった時計の針を動かしてほしい。


「無理か…」


明日が来て、明後日が来て、明々後日が来て。


一か月経って、半年経って、一年経って。


それを繰り返してもう10年もの月日が経った。


それなのに、私は前に進めていない。


麗斗と離れてからずっと、私だけあの時を引きずって生きている。


「はぁー…」


息を大きく吐き出すと白い煙が小さく舞った。


もう少しで実家に着く。実家に着いたら、熱いお風呂に浸かりたい。


シャワーは家で浴びたけど、湯船には浸かってないし。


それから、ゆっくり休もう。


昨日から色々ありすぎた。心も身体も休養が必要だ。


今日は金曜日だし、明日も明後日も仕事は休みだ。


久しぶりに愛犬のミミと散歩にも行きたい。


そんなことを考え歩いていると、もう実家の前にいた。