愛してるよ、何よりも


夢子?何だろう、何かあったのかな?


通話のボタンをタップして、受話器に耳を当てた。


「もしも…」


「もしもし!美桜?」


私の言葉を遮って、受話器から夢子の興奮した声が聞こえた。


私は戸惑いながらも、「うん」と少し笑う。


「何、どうしたの?」


受話器から夢子の声と一緒にざわざわとした声も聞こえてきた。


きっと夢子は会社の休憩室から電話してきてるんだろう。


「美桜さ、昨日の合コンで遅れてきた人覚えてる?」


ドクンと大きく心臓が波を打った。


「うっ…うん。何となく」


ドクドクと心臓が徐々に大きく震え始めた。動揺を隠せない。


「桐生さんね、美桜のこと気に入ったみたいでさ。あれから全員で連絡先交換したんだけど、今日桐生さんから連絡きてさ」


「へぇ…」


彼の名前を聞いた瞬間、胸が千切れるように痛んだ。


「でね、美桜の連絡先教えてって言ってきたから教えちゃった!今日中には電話あると思うからよろしくね!それだけ。あ、はい!今行きます!ごめん、課長に呼ばれた!じゃあまたね、美桜。お大事に!」


夢子は口早にそう言うと一方的に電話を切った。


ブチと切られてしまった電話を、私はしばらく耳に当てたままの状態でいた。


彼に、私の連絡先を知られてしまった…。今日中に彼から電話が来る…。


夢子の言葉が私の中で木霊して、ついさっき軽くなった頭に鈍い痛みが走った。