「どうして僕が、宮沢ニノって分かったんですか?」


全てのレースが終わり、駐車場の出口は帰宅する車で渋滞の列を作っていた。

その間を嬉しそうに話す人や、悔しそうに話す人、様々な人がすり抜けていく。

助手席では僕の質問の答えを探している彼女が、そういった人々を眺めていた。


「最初にあなたの名前と漢字を教えてもらったときに『あれっ?』って思ったの。

今、思うとそのときに、分かったといえば分かったということになるのかな」


ハンドルを握り締めたまま彼女へと目を向けると、照れくさそうな笑みを浮かべて左耳の裏側を左手の人差し指で掻いていた。

それを見つめた僕までもが照れくさくなってしまい、左右対称になりながらも僕まで同じ仕草をしてしまう。


「ほら、漢字で宮ノ沢くんの名前を書くと、宮沢ニノに何となく似ているというか・・・」


上手く説明ができないらしく、彼女はそこまで言ったところで今度は両手を組んで膝の上に置いて下を向いてしまった。

その仕草が何とも幼く見えて、美しいという印象よりも可愛いという印象を際立たせた。

それに対して思わず小さく笑みが零れてしまった。

その行為を彼女は横目でちらりと見つめ、僕と目が合いそうになるとすぐにまた視線を下に戻した。