「沢良木はこの公演が終わっても、舞台は続けるの?」


「そうだな・・・

やってみて、演じることは凄く好きになった。

だけど、○○○劇団以外でやるのは、ちょっと想像できねえな」


彼女はほんの一瞬だけ間を置き、すぐに自分の気持ちを口に出した。

きっと、その言葉は紛れもなく本音だろう。

彼女にとって無くてはならないもの、掛け替えのないものに○○○劇団はなったのだ。


「それだけに俺にとっての最初の公演が、劇団にとっての最終公演というのは寂しいな」


寂しい


その言葉が僕の胸の中に入り、寒い日に吐く白い息のように消えていく。

最初の公演の僕たちがこういう感情を抱いているのだから、他の団員はもっと、そして団長やつぐみさんはどれほど寂しいのだろう。

そんなことを思ってはみるものの、想像など全くできなかった。


「終わらないよ」


立ち上がり、お尻についていた砂利を彼女に当たらないように丁寧に落とす。

彼女も立ち上がり、やはり僕に当たらないように砂利を落とした。


「○○○劇団は終わったりはしない。

俺たちが心の中で思っている限り、○○○劇団はずっと続いていくよ」


自分でも恥ずかしくなるような言葉に、最後まで力を込めて口に出す。

そして、全てを出し終えてから、僕は下を向いた。