あきらめられない夢に

彼女はもう一度自分のもとに携帯電話を戻した。



そんなものを見せられてしまうと、僕の胸はまたしても激しく高鳴ってしまう。

このメールは本当にサイトの運営部から送信されたもので、僕はそれを信じていいのだろうか。

そうだとしたら、僕の作品はまだ名前も知らされていないアニメーション監督に評価されたということだろう。


「はい、送信」


様々な思いが葛藤するなか、彼女は勝手に僕の携帯電話からサイトにメールを送信してしまった。

僕は慌てて彼女から携帯電話を取り返し、送信ボックスを開いて見る。


「以上のメールが私のところに送信されてきましたが、これはそちらが送信したもので間違いはないでしょうか」


彼女を見ると、満足した表情で白い歯を僅かに出してこちらを見ていた。


「サイトの運営部に確認してみるのが一番よ」


僕は「ははは」と小さく発し、もう一度画面を確認した。



このメールの返信次第で、僕はまた夢を見てしまうかもしれない。

もう一度、あきらめた夢が、あきらめられない夢になってしまう。



そう考えると、高鳴っている鼓動が言いようのない不安へと変わろうしていた。


「大丈夫よ」


振り向きざまに彼女の唇が重なり、お互いに目を閉じる。



無駄な音が一切ない静かなこの部屋で、唇を重ね合わせる二人。



そのまま時が止まったかのように、僕たちは長くそのままでいた。