電車から降り、駅の改札を抜ける。



僕は落ちこぼれて帰ってきた。



東京で各駅停車しか停まらない駅にさえ一日の利用人数が少ないこの駅が主要となっている事実と、僕の目の前に広がっている景色がそのことを強く実感させた。




東京などの都会の色がテレビやインターネットなどで簡単に映しだせるこの時代で、日本という国全体がいとも簡単にそういった色一色に染まりつつあった。

世の中も、この国も、様々な色が混ざり合ってしまって、結局は一色の色だけになってしまっている。

自分が落ちこぼれてしまった言い訳をそのことにするつもりはないが、それでも今くらいはそういう考えを持たせてくれてもいいだろう。

それくらい、今の僕は落ちこぼれているのだから。



駅から実家までは徒歩で三十分くらいと決して近くはないが、これから迷惑を掛けることになるであろう母親への後ろめたい気持ちから迎えの誘いは拒否した。

歩き出すと七年間で大きな変化の見られない町並みが、今の僕にでも少しの懐かしさを感じさせてくれた。



小さいころに通っていた小学校と中学校を通って、更に実家へと向かう。

あの頃は夢がまだ漠然とし過ぎていて、それを簡単に口にすることができた。

しかし、それは年齢を重なることで残酷なまで早い速度で目の前に迫ってきて、自分のやりたいこと、できることの区別がつかなくなっていった。

今思えば、大学に進学したことも自分のやりたいことをやるためだけに行っただけだろう。

自分のできることから目を背けて、地元を離れてまで。


「あれ、宮ノ沢くん?」


突然、自分の名前を呼ばれて体が硬直した。

地元に帰ってきたことをしばらくは誰にも知られたくなかったが、早くも誰かに知られてしまったようだ。