あきらめられない夢に

携帯電話の写真を見ている彼女は本当に嬉しそうで、こちらまで嬉しくなってきてしまう。



彼女が悲しくなったら、今の僕は一緒に悲しくなってしまうだろう。


「そういえば、稽古は順調ですか?」


セブンスターの変わりにベンチの下に咲いていた名前も知らない花を左手に持ち、手で捏ねるようにしながら彼女に問いかけた。

問いかけられた瞬間の彼女の表情を見れば、言葉にしなくとも返事は分かり切っていた。


「うん」


顔の前で腕を伸ばし、快晴の空に背中を伸ばしながら落ち着いて答えてきた。

恐らく僕の予想以上に稽古は順調なのだろうと、その雰囲気を見て悟った。

ある程度まで稽古が進行したら僕も演出に加わってほしいと団長さんからは頼まれているが、そのときが早くなるだろう。


「そっか。沢良木はどうですか?」


「凄く頑張っているわよ。

稽古に対して凄く真面目で、誰にでも教えを乞うから上達も凄く早い。

実は才能あるかもしれないわね」


自分のことのように話すつぐみさんを見て、沢良木を紹介して良かったと思える。


「演技力は太鼓判を押しますよ。

あの日だって・・・」


あの日のことを思い出す。



あのときの沢良木はいつもと違っていて、まるで別人のようだった。

まだ、腰の辺りには沢良木の腕の感触が残っているような気がする。