あきらめられない夢に

つぐみさんは本当に不思議な人だと思う。



普段は大人の雰囲気を出しているというのに、次には子供のように、また次には別の雰囲気を持つ。

これは彼女が舞台に立っていることと関係はあるのだろうか。


「そんなに考えても思い出せないということは、つぐみさんの前では初めて吸うみたいですね。

煙草は平気ですか」


あまり納得していないような表情のまま首を縦に振ったが、彼女をヤニの煙で覆うことに気が引けて、下げていた手でそのまま箱へとセブンスターを仕舞った。

不思議とそのことに対して、喪失感というものは一切出てこなかった。


「別に遠慮しなくていいわよ」


「いや、そんなんじゃなくて、吸わなくていいやって気分になったので」


ここでも納得しなかったようで、表情は変わらないまま僕の横に腰を掛けてきた。



やはり彼女が隣に座っているところでヤニを吐き出すという行為は考えられず、この判断は正解だったといえる。


「そんなことより、上手く撮れました?」


何度も何度も撮り直しをしていたことを僕は知っている。

そのため、ある程度は納得のいく写真が撮れているだろうと思い、彼女の表情を変えることを僕は試みた。


「うん。やっぱり、宮ノ沢くんの言った通り、写真撮っておいて良かったわ」


試みは成功のようで、彼女の表情は周りの人よりもひと際輝く笑顔へと変わった。



しばらくこのベンチで写真を撮ろうかどうか悩んでいたので、「撮らなくて後悔することはあっても、余程のことがない限り撮っておいて後悔することはないだろうから撮ってきたら」と僕が何気に言った一言で彼女はフリージアの元へと行ったのだ。