まるで最初からこの劇団にいたかのように、今、上越はあの輪の中の中心にいる。

思えば高校時代もクラスの中心は常に上越で、何かがあるとみんなが上越のところへと集まっていた。


「あいつ、今は暇なんですよ」


差し入れの飲み物のキャップを開け、口へと移す。



今日はやけに暖かく、中に居るのが勿体ないくらい窓の外の日差しが気持ち良さそうだった。

このまま背中まで床につけて、大きく背伸びをしたら更に気持ちが良いだろう。


「実は最終公演の話をしたら、一人辞めてしまったの。

その人は別の劇団に入って、演劇自体は辞めたわけじゃなかったら良かったんだけど。

でも、もともと役がぎりぎりだったから、女の子役が一人足りないのよね」


寂しそうに話すつぐみさんの左肩が、僕の右肩に寄り掛かるように触れた。

それに伴い、つぐみさんの黒いストレートの髪が僕の耳に触れ、無意識に肩がぴくっと僅かに上がってしまう。

それに反応してつぐみさんがこちらを見てきたが、お互いの顔が予想以上に近かったため慌てて少し離れてしまった。

胸に手を当てると、みんなにまで聞こえてしまうのではないかと思うくらい鼓動が激しくなっている。