あきらめられない夢に

「お疲れさま」


「お疲れさまです」


時計の針がもうすぐ十時を指そうかという頃になり、テーブルの上に注文をしていた品が全て揃った。



もう少し遅くになると思ったが劇団の解散が予想よりも早く、僕たちは入口に三十分くらいしか待たなかった。

そのまま五分ほど歩いて、つぐみさんのお薦めという店に入ったのだ。


「ありがとう」


僕は演劇をやったことがない。



本格的にどころか幼稚園や小学校のお遊戯会ですら立っているだけの木の役や裏方のような役目を回されたので、お遊びや触れたことですらなかった。

それでも何かをやり通し、成し遂げるということが大変だというのは知っているつもりだし、終わったあとの達成感というのは最高の喜びなのは何をしていても変わらないものだろう。



ちらりとつぐみさんの表情を見る。



その表情は喜びというよりは、どこか無事に終わったという安堵感の大きいように僕の目には映った。



九十分間の公演を終えて、まだ体が火照っているのか頬が薄く赤色に染まっている。

髪の毛も汗ばみ湿り気を帯びているようで、黒色が凄く艶やかに見える。



これ以上眺めていると目が合ってしまいそうだったので、注文したホットコーヒーに視線を変えた。

目が合ってしまうと、今見えていたものが下心のように思えそうだった。