あきらめられない夢に

「あっ、その癖変わってないね」


「どういう癖なの?」


「ほら、耳の裏側を掻いているじゃないですか。

これは恥ずかしがっている証拠なんです」


今度は僕の指先を見て、二人は笑いだした。

大したことではなかったはずなのに、今は穴があったら入りたい気分だ。


「あんまり苛めちゃ可哀そうよ。

それより、あと一時間くらいで解散になるけど、二人はこの後って空いている?

もしよかったら、一緒に食事でもどうかしら」


それは僕の心を躍らせるのに十分な言葉だった。

隣を見ると、上越も嬉しそうに目を輝かせている。


「打ち上げとかは平気なんですか?」


すぐにでも一緒に食事に行きたい気持ちを抑え、ほんの少しの冷静さが辛うじて僕の口から出てきた。

日曜日の夜である今日の公演が千秋楽なはずで、そんな日は劇団で打ち上げをするものだと思った。


「うちの劇団はそういうのは反省会も含めて次の週の土曜日にやるって決まっているから、今日は何も無いから私なら平気よ」


つぐみさんが平気というならば、二人の返事に最早言葉など必要なかった。



「じゃあ」とだけ返事をして僕たちは出入り口へと向かい、つぐみさんは笑顔で他の出待ちの人たちと話し出した。