あきらめられない夢に

今、声を掛けたらつぐみさんではなく、舞台で活発に動き回っていたあの役の人物が僕の目の前に来るのではないだろうか。



そう思うと、声を掛けることを思わず躊躇ってしまう。


「宮ノ沢くん、まくりちゃん」


目の前に来てもその躊躇いはまだ消えず、どこか余所余所しくなってしまっている自分がもどかしかった。



そんな僕などお構いなしといった感じに、つぐみさんと上越の二人はいつも通りのやり取りをしていた。



その様子を見て、徐々に立ちこめていた躊躇いも取れていった。

間違いなく、僕の目の前にいるのはつぐみさんだ。


「やっぱり、つぐみさんだね」


頭で考えていたことが思わず口に出てしまい、二人は一斉に笑いだした。

あまりにも大きく笑う二人を見ていると何だか恥ずかしくなってしまい、右手の人差し指で右耳の裏側を掻きながら下を向く。