「天の前でだけその眼鏡を外して、一緒に勉強しようとか言って、うまい具合に二人きりになればいいんだよ。そうすれば多分上手くいくから」

「はぁ。そうですかねぇ……?」


上手くいくとは思えないけどなぁ。


「僕の頼み、聞いてくれるよね?紗凪ちゃん」



なんと言うことでしょう。


朝から紫野さんが私の目の前で、悩殺スマイルをご披露して下さるなんて!!!!

「分かりました。微力ながら最善を尽くします」


思わず紫野さんの手を握りしめ(どさくさに紛れて)、こうして秦野君攻略作戦は決定された。






紫野さんに見送られ、場所は戦場の食堂へと移った。


挨拶をしながら私が食堂に入ると、食堂にいた皆がチラチラと私を見ている。

そこにいたのは、宏樹さん、遥斗さん、チャラ男、そして高校生の二人組だ。


「あれ?イメチェン?」

それが遥斗さんの第一声。


「髪の毛染めたのか?」

これはチャラ男だ。


「紗凪ちゃん、なんか変わったか?」

そう私に話してきたのは、寮長・宏樹さん。



「えとあの、昨日紫野さんにやって頂いたんです。髪の毛」

やっぱり恥ずかしいので、下を向いて小声で話してしまう私はチキンだ。


「似合ってんじゃん」

「軽くなったね」

「……見違えたな……」

大学生の三人組が、銘々に感想を述べてくれた。だから目立ちたく無いんだってば。

放っておいてくれれば良いものを、三人はわざわざ席を立ってまで、私に近づいて来た。